中世のキリスト教の暗黒史の中に、当時の権威の象徴としての場所、すなわち教会や、城内におけるハーブの栽培とブレンド技術の外部への漏えい事件があります。わが国でも日蓮や最澄の布教の足跡として必ず薬師寺が残ったのも、彼たち高名な宗教家が実は有数の薬草使いであったことを物語っているのです。

 ヨーロッパでも長い中世の歴史の中、村のはずれの老女が偶然、ハーブの素材とレシピを発見し、そしてその村での評判が神父や王侯の権威を、結果 として侵すことになり、それがあの有名な魔女狩りへと発展していったのです。

 その後、近代医学がドイツを中心として盛んになると当然、日本でも一時、科学薬品に和漢薬が抑えられたことがあったように、ドイツでもハーブを使った生薬が科学薬品に抑えられてしまいました。そのうえ、ティー(お茶)も紅茶が中国から入ってきてハーブティーが圧迫され、ハーブがヨーロッパで霞(かす)んでしまったのです。

 現在のヨーロッパの嗜好(しこう)飲料を大別するとハーブティー、紅茶、コーヒーの順になるでしょう。この流れは1960年代にアメリカのベトナム戦争の時にもありました。

 最前線の周囲を見れば、エスニックのベトナム料理やタイ料理などに使われるものはハーブばかり。そしてベトナム戦争が終わって帰国した兵士たちはハーブをアメリカ中に広げたのです。同時期、今のバブル崩壊後の日本のような状況に一時あったアメリカで、「もうこれからは金や物の時代ではないのだ。精神を大切にしなければならない時代なのだ。”Back to nature”=自然に返ろう」ということを提唱したのが、当時の若者の思想的な指導者だったヒッピーでした。彼らはそのシンボルとしてハーブを使いました。

 その後、アメリカの生存者からカフェイン有害説が出たりして、ますますノンカフェインのハーブは定着しつつあります。今のアメリカの嗜好飲料は大別 するとハーブティー、コーヒー、紅茶という順になるでしょう。