ハーブのほとんどは、四季を通じて温暖な陽光あふれる地中海沿岸が原産地です。文化の交流に伴って遠くへ運ばれたハーブも多く、伝来した先の気候風土がぴったりとなじんだために帰化してしまったものもあります。ほかにやや冷涼なヨーロッパ中・北部原産のハーブもあれば、熱い熱帯アジア原産のものもあります。要するに古代文明発祥の地がハーブのふるさとなのです。これはハーブがなければ古代の民族、人々の肉体や精神の傷がいやされなかったということにもつながります。

 しかし、1986年、ソ連(現ロシア)で突発的に起きたチェルノブイリの原発事故は、周辺の、それまでハーブの原産地であり、供給地でもあったヨーロッパ地域(東=ウラル山脈以西、西=アイルランド以東、南=トルコ以北、北=ノルウェー以北)を壊滅状態にさせてしまいました。ハーブの“現産地”である主要な供給地が変わってしまったのです。太古からのハーブの消費地であったヨーロッパの西側の人々や200年来、ハーブを消費してきたアメリカの人々にとっては青天の霹靂(へきれき)ともいえる出来事だったのです。主生産地が消滅し、困惑した彼らは本来の供給地を拡大したり、新しい栽培地域の開発を始めました。わずかな歴史の手掛かりを基に…。

 例えば人類の発祥の地ということとエジプト文明をかみあわせて、アフリカ・中近東での栽培、インダス文明のかかわりからその周辺や、アメリカインディアンの用いていた伝統から北アメリカで、マヤ文明・アステカ文明の伝統から中南米諸国で―といった具合に世界中で生産が始まったのです。そして一番必要なことは形や色がきれいなどということは問題ではなく、味や香りが強いということなのです。要はハーブ本来の薬用成分がどれだけ含まれていて、どのくらいエッセンシャルオイル(精油)としても抽出できるかということなのです。だからこそ、ハーブの育成には農薬を使うことは禁物なのです。